ダウン症のある赤ちゃんを授かったご両親へ

1999/06/14(2020一部加筆)
文責:岩崎 雅行(受容ネット代表)

お子さまのお誕生、心よりおよろこび申しあげます。

お子さまは染色体を1本余分にもってらっしゃるのに、持ち前の強い生命力と強運のため、またお母さんのおなかの中の状態も良かったため、立派に生まれてこられたことを、まずもって祝福いたします。ご両親におかれましても、今後このお子さまのおかげで、世界が飛躍的に広がることでしょう。こんな有意義な子育ては、めったに経験できるものではありません。お子さまと共に、じっくり楽しまれてください。

とはいえ、ご両親は少し驚かれたことでしょう。責任を感じてらっしゃるとしたら、全くその必要はありません。ダウン症は、誰にでも偶然に起こりうることですから、誰の責任でもなく、人類がもつ多様なバリエーションの一つに過ぎません。

あるいは、悲観的になられたかも知れません。でも、ダウン症は悲観すべき悪いことでしょうか? 私たちには、そうは思えません。ダウン症は個性のひとつ、病気ではなく体質と理解しています。だって、ダウン症だからといって苦痛があるわけでもなく、病院に行く必要もないのですから(もちろん、合併症が起きたときには、病院に連れて行って治してあげないといけませんが)。

障害は決して不幸ではありません。周囲の理解のない人たちが、そう決めつけているだけです。幸不幸は、本人がどう感じているかという心の持ちようであって、ダウン症のご本人やご家族は『生まれてきて本当に良かった、生きていくのは楽しい』と感じている人の割合が、むしろ高いのではないかと思っています。

将来に対する不安があるかもしれません。でも、そんなに心配することはありません。戦前には二十歳代だった平均寿命も、今では六十歳をこえましたし、大学を出た人や様々な職業に就いている人がいます。確かに、心や体の成長はゆっくりですが、しっかりした知識と愛情に裏うちされた子育て(療育)を心がけることで、ずいぶん豊かな発達がのぞめます。情緒面、感性の豊かさは、むしろ普通以上かなと思います。

また、親にとっても、苦労ばかりというわけではありません。最初はダウン症の特徴にばかり目が行くかも知れませんが、時間がたてば「ダウン症児」を育てているのではなく、わが子を育てているんだという、ごく当たり前のことに気付くはずです。ちゃんと親の個性が遺伝しています。いいところも、悪いところも。そのことがわかるにつれ、一層かわいさが増してくるでしょう。また、この子たちは、本当にいろいろステキな事を、親や周りの者に運んで来てくれます。この子を授かって本当に良かったと心から思える日が、遠からずやってくるでしょう。

赤ちゃんにダウン症があることを突然知った今、気持ちは動転し、障がいについての漠然とした不安や、無意識の中にあった差別感情などのため、すんなり受け入れるのは難しいだろうと思います。それは当たり前のことです。誰でも最初はそうです。それでも、いろいろな情報を集めたり、実際にダウン症のある子を育てている親と話したり、自分でじっくり考えたりして、徐々に受け入れていくわけですが、その期間は人それぞれです。数年かかる場合も珍しくありません。受け入れは早いにこしたことはないのですが、頭ではわかっていても感情はコントロールできません。あせらず、ゆっくりいきましょう。

受け入れをスムーズにするには、親同志の話し合いがとても役に立つことを、自分たちの経験から知っています。本やネットなどで情報を得ることも大切ですが、古い知識でかかれた否定的なものもありますので、まずは、私たちにご遠慮なく連絡されてください。この普通では味わえない子育てを一緒に楽しんでいきましょう。

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